「ほらお兄ちゃん、早く起きて」

「……あ?」

「まだ夢でも見てるの? 早く起きてよ」

よく見知った女の顔がドアップでオレの視界に映り込む。それが不快で反射的に額を叩けば、女は蛙が潰れたような声を上げてオレの頭を叩き返してくる。ふざけるな、お前とは頭の出来が違うんだぞ。

「よくもこの美少女の顔に傷を……お兄ちゃんとは顔の出来が違うんだからね! まあそれはともかく、ほら、早く起きて学校行かないと」

「学校……なんでお前も行くんだよ」

「なんでって、わたしが女子高生で、そしてお兄ちゃんの双子の妹だからに決まってるでしょ」

「ああ……」

そうだ。そうだった。

目の前の丸眼鏡をかけた愚図女────こいつは、オレに全く似ていない双子の妹だった。似ていないのは顔だけじゃない。能力もそうだ。オレよりも頭が悪い、行動力もない、オレがいないと何にも出来やしない、オレの下位互換。たまたま、オレと同じタイミングで腹から出てきただけの愚妹。

愚妹に急かされ、制服に着替えさせられる。用意された朝食をスルーすれば、愚妹は冷蔵庫からエネルギーゼリーを掴んでオレの鞄に突っ込んだ。話が早い。出来すぎたぐらいの陽気の下、オレと愚妹は学校までの〝いつも通り〟の道を歩く。相も変わらずドラマがねえ。突然角から出てくる男も女もトラックもなんもねえ。ふざけてるのか?

「お兄ちゃん、人間とかトラックとか既出の二度ネタばっかで恥ずかしくないの?」

「心を読むな。ならお前が案を出せ」

「うーん……食パン単体。逆に。バグったオブジェクトみたいな」

「見た目にインパクトないだろ。逆なら……食パンが人間を食べかけながら出てくる」

「見た人間の気が狂いそうで最高」

愚妹はそう言って笑う。結局角からは何も出てこねえから、オレ達は空想に頭を巡らせて時間を費やす。箸が転んでもおかしい年頃なのかなんなのか知らねえが、目の前の女は、オレがどれだけ荒唐無稽を超えて頭がおかしいことを言おうがきゃらきゃらと笑う。反射で笑ってるのかと突っかかれば、そんなことないよ、と向こうも突っかかってきた。こういう時、少しだけ双子という言葉が思い起こされるが、たったそれだけのことで一緒にされてたまるか。

「だってわたし、お兄ちゃん以外のひとと話しても何にも面白いと思わないんだもん」

「だからお前は駄目なんだよ。一分野にこだわるから視野が狭くて発想が貧困なんだ」